落語 『桃太郎』上方風がまた笑える

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「金坊まだ寝ていないのか、よし、じゃあお父ちゃんが面白い話をしてやるから寝るんだぞ、むかしむかし・・・」

「 昔々って何年ぐらい前、西暦何年?」

「西暦なんかない、ずっと昔だよ、あるところにお爺さんとお婆さんがいました」

「お父ちゃんちょっと、ある所ってどこ ?お爺さんとお婆さんの名前は」

「ある所はあるところだよ。お爺さんとお婆さんの名前は無い」

「名前のない人なんていないよ」

「あったけどな、貧乏だから売っちゃったんだ」

「へえ、貧乏だから売っちゃったの?じゃあお父ちゃんはどうして売らないの」

「黙って聞きなよ。お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川へ洗濯に行ったんだ。お婆さんが洗濯をしてると大きな桃が流れてきたんだな。これを持って帰って割ってみると男の子が産まれたんだ。桃から生まれたから桃太郎と名前を付けた。この子が大きくなって、犬と猿と雉を連れて鬼ヶ島に鬼退治に行ったんだ。そこで宝物を持って帰ってお爺さんとお婆さんを喜ばせました。・・・あれまだ寝ないのか。普通はここで、おや、もう寝ちまったのか、ははは、子どもって罪のないものだなってなるんだがな」

「何言ってんの。さっきまでなら努力すればまだ眠れたよ。だけど今の話を聞いたら目が冴えちゃったよ。今のは桃太郎って話だろ。この話はねもっと深い意味があるんだよ」

「何だい深い意味ってのは」

「むかしむかしあるところにと言うのはね、何時代のどこと決めないでわざとぼかしてあるの。どうしてかというと日本中の子どもがこの話を聞いて想像しやすいようにね」

「へえ、そうなんだ」

「次にお爺さんとお婆さんと言うのは本当はお父さんとお母さんなんだけど、柔らかみを出すためそう言ってるんだ。父と母に濁点をつけるとじじとばばだろう。だからお爺さんとお婆さん。そして山と川に行くのはね父の恩は山よりも高く母の恩は海よりも深しという諺を表してるんだよ。でも海のない地方もあるから海につながる川へ行ったとしたの」

「へーなるほどね、おーいお母さん、お前もこっちに来て聞きなさいよ、ためになるから。それからどうした」

「桃の中から子供が生まれたって言うけどそれは桃の様な子供を授かったということなんだよ。本当に桃から生まれたら果物屋さんは赤ん坊だらけになっちゃうもの」

「うん、それは俺もおかしいなと思ってんだ、桃の中で赤ん坊が生きてるわけないしな」

「そしてね鬼ヶ島に行くというのは、つまり親元を離れて世間に出て苦労をするということなんだよ。それから犬猿雉が出てくるだろう、あれにもちゃんと理由があるんだ」

「何だいその理由ってのは」

「犬は3日飼われたら3年恩を忘れないっていうぐらい仁義にあつい動物。猿には智恵がある。雉には勇気がある。つまりこの3匹で仁・智・勇をあらわしているんだよ。人間は世間に出たら仁・智・勇を働かせなくてはいけない。そうすれば世間から信用という宝物を得ることができるというわけなんだよ。これを子供にもわかるように作られた話がこの桃太郎って話なんだよ。わかったかいお父ちゃん」

オチへと続きます

(参考:はじめての落語 講談社)

おなじみの『桃太郎』を持ってきました。

本当は冒頭にはお父さんの話を聞いているうちに、子どもが寝てしまって、「へえ、子どもって罪がないねえ」というところから始まるのですが、そこをカットしています。

金坊の質問攻めに、父親は適当なことを言って強引に話を進めますが、本当はこのやりとりも笑いを取る部分です。演者によっては工夫して聞かせる部分です。

そして、子どもが桃太郎に隠された意味について話します。父親が感心しながら聞いているという図がなんともおかしな噺に仕上げています。

この噺、上方風で聞くとより面白さが増すと感じます。関西弁の雰囲気でしょうね。

冒頭の笑福亭福笑さんの「まくら」の話も笑えます。

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コメント

  1. ヘルシーママ より:

    私の母の事思い出しました
    私が二人目の出産留守時
    本の大好きな長女に毎日毎日「桃太郎」せがまれていて
    母の方があまりのしつこさに本なしで語っていたそうです
    すると話が盛り上がりすぎて
    最後は「桃太郎」は川に流されたんですよ~~~
    すごくないですですか?
    (笑)

    • キャップ より:

      なるほど、そして桃の中に戻って行った?

      実はこの話、大人向けの部分もあって、際どいところもあるんですが、カットしています。

  2. ドンブラコ より:

    凄い楽しい話ですね♪笑っちゃいました♪
    子供も今の時代を反映していますね。
    親をも納得させるプレゼン!
    将来有望な子供です\(~o~)/

    • キャップ より:

      実際、寄席で聞くともっと笑えます。

      私も得意ネタの一つにしているんですよ。